— 読者が最初に知るべき「なぜ気にするのか」
ロボットに「頭の中で先を想像して、良い動きを選ばせる」AI(世界モデル)がある。これはゴールに近づく動きを選ぶ。ところが、途中で壁を突き抜ける無理な動きも「ゴールに近いから良さそう」と選んでしまうことがある。
失敗したとき、原因は2つ考えられる。①そもそも良い動きの候補が無い(=作る側の問題)か、②良い候補はあるのに選び損ねた(=選び方の問題)か。この2つは直し方が全く違うのに、平均の成功率を見ても区別できない。そこを切り分けたい。
— 一段落で。手法の詳細は後回し(§5)
公開されている本物のAIモデル2種で、簡単な迷路(壁の隙間を通ってゴール)を何千回も試した。各回で数百の候補の動きを用意し、全部を実際に動かして「どれが本当は成功するか」を確かめたうえで、AIが選んだものと比べた。これで失敗を①(候補が無い)と②(選び損ね)に切り分けられる。さらに「壁の位置を使って危ない候補を事前に外す」簡単な仕掛けを足して、成功率が上がるか測った。
この仕掛けの正式名は PCC(Probe-based Constraint Consistency): 凍結モデルの想像ロールアウト潜在から少数ラベル(200)の線形回帰で座標を復号し、「復号軌道が壁中心線を横切るとき、その交点がドアからどれだけ外れているか」の最大値をリスクとして選択コストに加点する(数式は§5の「数式で見る」)。モデル本体は再学習しない。
— 1試行の流れと、事前に固定した5つの条件
2モデル × 5条件 × 5シード。各条件は500の対応試行で、半分は壁を渡らない same-side、半分は扉を通って壁を渡る cross-wall。候補数は最大256本で固定した。
— 要点3つ
— 木下の原則に従い、事実(データ)と 解釈(私の読み)を分けて書く
jepa-wms, 凍結commit 13cf1d9c)を、連続2次元Wallタスクで評価。2モデル×5シード・各条件500ペア・候補予算256。ハッシュ検証+機械 claim gate 6条件を通過(判定契約 schema v3・実行前凍結)。1 − 選択成功 = 生成失敗 + 選び損ね。各テストで全候補を真のシミュレータで実行し、「成功候補が1つでも在るか(coverage)」を接地真実で判定。難条件の壁横断層(例: 扉ずれ)では 生成失敗≈0.07 に対し 選び損ね≈0.57–0.59。4つの事前登録した診断(H1–H4)の判定:
| 診断 | 判定 | 根拠(事実)+凍結閾値 |
|---|---|---|
| H2 単純な選び方の修正(PCC)は効くか | not_supported | 効果量 −0.026〜+0.012、実効ゲート(+0.05利得かつHolm有意)に到達なし |
| H3 平均が構造を隠すか | supported | 層別ギャップ topology≈0.31 / coverage≈0.87(閾値≥0.10) |
| H4 2モデルは違うか | supported | 成功率差0.012(≤0.05)・|予測誤差差|0.366(≥0.05)。故障率profile差は閾値未達 |
| H1 機構シフト | indeterminate | matched条件の失敗数 n<50 で閾値未達=証拠なし扱い |
候補バンク B = {a(1), …, a(256)}, a(j) ∈ [−1,1]6×5×2(マクロ6手×低レベル5行動)
想像: ẑ1:T(j) = fθ(z0, a(j))(fθ=凍結モデル)/復号: x̂t(j) = gφ(ẑt(j))(200ラベル線形回帰)
PCCリスク: R(j) = maxseg max(0, |ycross − ydoor| − whalf)(壁中心線を横切る復号セグメントの交点がドアからどれだけ外れるか。checker幾何は全条件で matched 値 (32,30,4) に固定 — 扉ずれ・狭い扉では実行側だけが変わり、PCCは古い幾何のまま照合する)
選択: score = ν(Clat) + λ·ν(R) + 0.25λ·1[R>10−5], ĵ = argmin(ν=5–95%分位正規化→[0,2]、λはグリッド{0…30}から検証40件で選択)
成功: S(j) = 1[‖xT,exec(j) − xgoal‖ < 4.5](距離のみ。衝突は別記録)/被覆: C = maxj S(j)
恒等式: 1 − E[S(ĵ)] = P(C=0) + P(C=1 ∧ S(ĵ)=0) = 候補が無い + 選び損ね
検定: 不一致対 b, c に対し p = min(1, 2·P(Bin(b+c,1/2) ≤ min(b,c)))、10対比を Holm で familywise 制御。区間はシード5本の復元抽出ブートストラップ(≥2,000 draw)。
| model / condition | latent | PCC | 差 | Holm p |
|---|---|---|---|---|
| dino / narrow-door | 0.742 | 0.716 | −0.026 | 0.533 |
| dino / action-noise | 0.930 | 0.910 | −0.020 | 0.680 |
| jepa / matched | 0.950 | 0.944 | −0.006 | 1.000 |
| jepa / narrow-door | 0.740 | 0.752 | +0.012 | 1.000 |
全10条件で Holm 有意な改善なし(効果量 −0.026〜+0.012、点推定は7条件で負・2条件で正)。matched の coverage は予算16で95.0%・256で97.8%とほぼ天井=そこでは良い候補が既に在る。
— この診断がどの文脈に立つか。文献はすべて一次ソースで確認済み
— 「再現できる」と言うために固定したものと、公開上まだ足りないもの
| 固定対象 | 固定値・照合方法 |
|---|---|
| 上流コード | facebookresearch/jepa-wms commit 13cf1d9c7e476f53c17714d2e0f1dc239a883ce0 |
| JEPA-WM重み | SHA-256 8efb0623cfba1cb3ca210de26f7579c83dd24936635f11989c515afcb23bea1e |
| DINO-WM重み | SHA-256 ff170be5aec9249768be4a220d600b8f00a8589b2a78982ecf9273809f2767df |
| 乱数と試行 | 5 seeds (8101, 9110, 10119, 11128, 12137)。各seedで検証40試行、各条件のテスト100試行。 |
| 対応比較 | 同じ課題・同じ候補列を全モデル/全選択法で共有。候補予算 16, 32, 64, 128, 256 は同一256本の入れ子。 |
| 統計と保存 | seed-cluster bootstrap 95%、exact McNemar、Holm補正。負・無効・判定不能の結果も残し、raw成果物はサイズとSHA-256で照合。 |